影と闇
いつもつけるカラコンにはレンズが入っているから、それがないとぼんやりして見えないという。


想像するだけでびっくりする。


私はメイクをしたことは何度かあるけど、学校でメイクした顔を見せると笑われそうだと思い、すっぴんで学校に向かう。


クラスの女子の大半はメイクをすることが必須項目のひとつとして意識しているらしいが、末那はそのことに対抗するかのようになにもせずに学校に来ている。


あっ、そうだ。


私、ここに来てから末那の姿を一度も見ていない。


来てるのかな? まだ来てないのかな?


周りを囲う蘭子たちから目をそらして、あたりを見渡すが、末那の姿は見えない。


眉間にシワを寄せて首をかしげると、集合場所近くのバスの奥側から私服姿の学年主任の先生がやってきた。


それと同時に担任の先生を含めた2年生担当の先生たちが集まり、しゃべっていた2年生全員が一斉に黙り込む。


会話することを禁止されているかのようだ。


だが、それを否定する雰囲気の学年主任の先生の声がこの場所で響いた。


「全員そろってるな? おはよう」


明るい調子でそう言う主任の先生の声に、急に黙り込んだ生徒たちの顔色が一気に明るくなる。
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