影と闇
そうだ。


たしかに2年生が全員修学旅行についての話を先生たちから聞くために体育館に来ていたけど、末那だけは来なかった。


だから、どの場所が集合場所か知らなくてどこかで2年生全員を待っている可能性がある。


本当に集合場所を間違えただけなら問題ないけど、ちょっと心に引っかかるものがある。


数日前に末那に誘われてショッピングに行った帰りに偶然ミカと再会して、末那の昔の話を聞かされたことだ。


そのとき落ち着かなかったから頭が混乱してしばらくは考えなかったけど、冷静になって考えてみると疑問がさらにいくつか浮かんでくる。


どういう疑問なのかは誰にも言えないけど、いつかは言わなきゃいけない。


スマホをギュッと握りしめ、視線をアスファルトに落とす。


「と、とりあえず、今いる人数だけでいい。クラス順にバスに乗っていきなさい」


少し慌てたような主任の先生の声音。


そのことに気づいてながらも、視線を下に向けたまま気づかないフリをする。


自分のクラスが書かれているバスに乗り込み、一番前の席に座った。


普通の乗用車なら大丈夫だけど、バスなどの大きな乗りものは酔いやすいので、酔いにくい席に座るのがクセだ。


バスに乗るということは当然知っていたので、家に出る前に酔い止めの薬を飲んでおいた。
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