不完全美学
放課後あたしは校舎の一階の隅にある、美術室に向かっていた。
美術の授業は選択科目の一つだから、美術選択生か美術部員以外は美術室には入らない。
そしてあたしは選択生でも、まして美術部員でもなかった。
つまり、美術室に入るのはこれが初めて。
あたしは少しだけ緊張しながら足を進める。
できるだけ何てことないような顔を意識して。
その大きな扉の上にある“美術室”の文字を確認し、あたしはゆっくり扉を開けた。