不完全美学
凪は相変わらず無表情のままあたしを見てる。
「知ってる。だけど俺が何とか出来る話じゃないだろ」
そうだけど。
確かにその通りだけど、他にもっと言い方があるじゃん。
あたしは凪を睨んだまま黙る。
すると凪はハァーとため息をついた。
「嫌いな奴に嫌いな言葉言われて、お前悔しくないわけ?」
そう言われてハッとした。
そっか。
凪はわざと言ったんだ。
睨んでいた視線を緩めて真っ直ぐに見た凪の瞳が、なんだか好きだと思った。
なんだか胸が絞られるみたいに痛くて。
だけど肩の力は抜けてゆく。
あたしは馬鹿みたいに泣いた。