不完全美学

凪は相変わらず無表情のままあたしを見てる。


「知ってる。だけど俺が何とか出来る話じゃないだろ」


そうだけど。
確かにその通りだけど、他にもっと言い方があるじゃん。

あたしは凪を睨んだまま黙る。
すると凪はハァーとため息をついた。


「嫌いな奴に嫌いな言葉言われて、お前悔しくないわけ?」


そう言われてハッとした。
そっか。
凪はわざと言ったんだ。

睨んでいた視線を緩めて真っ直ぐに見た凪の瞳が、なんだか好きだと思った。


なんだか胸が絞られるみたいに痛くて。
だけど肩の力は抜けてゆく。

あたしは馬鹿みたいに泣いた。
< 101 / 252 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop