不完全美学

その日から凪は画用紙にデッサンしたりするのをやめて、キャンバスに向かうようになった。

どんな絵を描くのかとか、何色で塗るのかとか。

気になることは沢山あったのに、凪は一つも教えてくれなかった。

そしてそのままあたしは美術室に行かなくなり、凪は放課後には美術室にこもった。


「あ〜ぁ、つまんない」


あたしは窓の外の景色が冬の気配を帯びてゆくのを眺めながら、ぽつりと呟く。

すると前の席に居た真弓がくるりと振り向いた。


「何がつまらないわけ?」

「凪が美術室に入れてくれないんだもん」
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