不完全美学

彼氏はあたしをむやみに咎めたりはせず、最後まで優しかった。

理由も聞かない彼。
もし聞かれていても、あたしはきっと答えられない。
分からなかった。

ただ一つだけ言えるのは、一緒に居たいと思えないということだ。


「今度はちゃんと好きな奴と付き合えよ」


優しい笑顔でそう言われて、あたしは小さく頷いた。


そうして家に帰るまでの道の途中で、あたしは少しだけ泣いた。

おかしいな。
最近妙に涙腺が緩いみたい。

帰ったら目を冷やそう。
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