不完全美学

その時日直の仕事を終えた淳司君が教室にやってきた。

さっと右手を軽く上げて真弓に合図する。

じゃあ、と立ち上がる真弓をあたしは小さく呼びとめた。


「ねぇ、真弓……」


振り返る真弓。
あたしは少し俯く。


「万が一だけど、あたしが凪なんかに惚れるって……変じゃない?」


あんな愛想が無くて何考えてるかわかんない奴だから。
万が一でも惚れる理由が見付からない。

真弓はフッっ柔らかく微笑むと、あたしの額に軽くデコピンをした。


「全然! 変じゃないよ」
< 123 / 252 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop