不完全美学
その時日直の仕事を終えた淳司君が教室にやってきた。
さっと右手を軽く上げて真弓に合図する。
じゃあ、と立ち上がる真弓をあたしは小さく呼びとめた。
「ねぇ、真弓……」
振り返る真弓。
あたしは少し俯く。
「万が一だけど、あたしが凪なんかに惚れるって……変じゃない?」
あんな愛想が無くて何考えてるかわかんない奴だから。
万が一でも惚れる理由が見付からない。
真弓はフッっ柔らかく微笑むと、あたしの額に軽くデコピンをした。
「全然! 変じゃないよ」