不完全美学

凪が飲み物を持っている時はたいていいちごみるくだった。

あたしも図書室に行く前に購買でいちごみるくを買ってみた。

胸が焼けるくらい甘い。
だけどなんだか嬉しくなる味だ。


日が暮れると、あたしは決まってわざと美術室のそばを通って帰る。

裏口から出た方が駅に近いからと、自分に言い訳をしながら。


あ、凪が道具を片付けてる。

その様子は分かるけど、絵はつも見えない角度にあった。


凪に声をかけたりはしない。

このあたしに、もう来るななんて言う奴に尻尾は振らない。

あたしは素知らぬ顔で、美術室の横を通り抜けてゆく。
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