不完全美学
「葉月!」
あたしの肩がビクンと跳ねる。
振り返ると窓から身を乗り出した凪がいた。
おいおい、アンタはそんな事するキャラじゃないでしょ。
心の中でツッコミを入れながらも、その心は騒いでいた。
「待てって、葉月」
凪が初めてあたしの名前を呼んだ。
「何逃げてんだよ」
「逃げてないわよ……」
あぁ、欝陶しいドキドキめ。
おさまれ。
不意に真弓の言葉を思い出す。
『北澤君にドキドキしたら』
違うよ。
これは初めて名前呼ばれて動揺してるだけ。
ただ、それだけ。