不完全美学
素直になれない
画用紙に向かっていた凪は、いちごみるくを手に取った。
「これ、くれんの?」
「うん、あげる。差し入れ」
あたしの声を聞くやいなや、ストローをさしてちゅるちゅると吸い始めた凪。
「俺、これ好きなんだ」
知ってる、とは言わなかった。
あたしは頬が緩みそうなのを必死に堪える。
「コンクールの結果はいつ分かるの?」
「一ヶ月後くらいかな」
「何を描いたの?」
その質問を凪は無視して、鉛筆をまた滑らせる。
結局何を描いたかは教えてくれない気だな。
機嫌良く絵を描く凪の側で、あたしはまた絵を想像するしかなかった。