不完全美学

凪の横顔を見ながら考える。

あたしは本当にコイツが好きなんだろうか。

好きって何なのか、詳しいつもりでいたくせに何も分からない。

何を基準に好きと判断するのか分からないよ。

こうして美術室に来てるのは、やっぱり絵が見たいからのような気もするし。


凪は相変わらず喋らない。
あたしに気をつかう様子は一切ない。

こんな奴今まで居なかった。

ムカつく奴。
変な奴。


美術室には凪が動かす筆の掠れた音だけが響く。

この空間も、悪くはないんだけど。
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