不完全美学

「何か描く?」


不意に凪が口を開いた。
そういえば以前はよく画用紙を貰って落書きをしていた。

あたしが頷くと、凪はあたしに画用紙を渡してくれる。

受け取ったあたしはツルツルした方の面を確かめ、鉛筆を構えた。


「今日は凪を描くよ」


凪は耳を疑うといったように、驚いた表情を見せた。


「俺なんか描いてもつまらないだろ」

「そんなことないよ」


凪はプイッとまた絵に向き直ってしまった。

心なしか耳元が赤い。
……照れてる?

凪が驚いたり照れたりする姿なんて貴重。
今日は良い日だ。
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