不完全美学
あたしが描き終える頃、ちょうど凪も描き終えたようだった。
凪が描いた青い絵は、渦巻いているような、もしくは花が咲いているような絵だった。
真ん中にある白が、パールみたいにきらめいてみえる。
あたしが描き上げた凪は、どう見ても凪じゃなかった。
輪郭は歪んでいるし、顔のバランスが悪い。
やっぱりあたし、絵心ないな。
だけど凪のあの切れ長の眼だけは上手く描けた気がする。
すると凪が柄にもなく遠慮がちにあたしの絵を覗いた。
「ふうん。お前の絵、やっぱ悪くないな」
そう言った横顔はやっぱり照れているようにも見える。
あたしは口元を画用紙で隠し、ニヤニヤと笑った。