不完全美学
心の声
凪と別れて家に帰ると、ママはまだ居なかった。
冷蔵庫を開けて、あたしは野菜やお肉を取り出す。
ママとの壁が薄くなったあの日から、あたしはたまに夕食を作るようになった。
美術室に行けなくて暇だったからっていうのもあるんだけど。
食事をしながら交わされる、ほんの少しの会話が嬉しかった。
今日のメニューはカレーライスだ。
まだ簡単な料理しか作れないんだもん。
カレーを煮込んでいる所でママが帰って来た。
「ただいま、良い匂いねぇ」
「お帰りなさい。着替えてきて良いよ」
有り触れた、平凡な親子の会話だ。