不完全美学

ほとんど無意識に、あたしは口を開いていた。


「ママはどうしてパパを好きになったの?」


目を丸くしているママ。
対してあたしの目は真剣そのものだと思う。

ママは少しだけ照れたみたいにスプーンを置く。


「なんでかしらね。大してハンサムでもなかったし、別に優しくもないし」


そう言ってママはクスクスと楽しそうに笑う。

あたしはさらに聞く。


「それなのに、なんで好きだと思ったの? 理由がないのに」


真剣な様子のあたしを、ママは優しく見つめた。
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