不完全美学

「葉月は好きな人は居ないの?」


ママの言葉にあたしは黙って目を伏せる。

ママがどう思ったのかは分からないけど、話を続けた。


「好きだと思うのに、理由なんて要らなかったわよ」


それはあたしにとって、すごく意外な答えだった。

好きになるのに理由がないなんて、信じられない。


「そんなの、変だよ」


戸惑うあたしの声は少し震え、情けなく響く。


「変じゃないわよ。理由なんかより、心が動くってことが重要よ」

「心が動くって?」
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