不完全美学
あたしは北澤君の制服のシャツの裾を掴み、俯き加減で言った。
「そんなこと、言わないでよ。友達でもいいから……」
超自然な嘘泣きは、知らぬ間に会得していたあたしの特技。
あらゆる場面で、すっごく役に立つんだ。
「やめろよ。嘘泣きは気持ち悪いし、欝陶しい」
思わずあたしは顔を上げる。
「……なんで分かったの」
「分かるさ。もう気がすんだ?」
北澤君は目も合わせない。
こんな奴初めてだ。
真弓達が無理だって言うのも分かる。
王子っていうか、陰気王子だね。
あたしは小さくため息をついた。