不完全美学
ママは冷めかけたカレーを一口すくって口に運ぶ。
チラリとあたしを見ると、ママはニッと笑った。
「心が叫ぶのよ。パパに触れたい、パパを自分のものにしたい、ってね」
そう言ったママはまるで恋をする女の子みたいで、あたしはわずかに悔しくなる。
ママもまた、あたしより上手く恋が出来る人なんだ。
「あたしの心は、そんな風に叫んでくれない。」
あたしはそうポツリと呟いた。
そうして残りのカレーを片付けてゆく。
「葉月が耳を傾けてないだけかもしれないわよ」
あたしはまた少し黙った。