不完全美学
あたしはあたしの心の声ってやつに耳を傾けようと思った。
注意深く、耳をすまして。
学校に居る間もあたしはそれを意識した。
「何考えてんの、葉月?」
真弓があたしの顔を覗き込む。
真弓の真っ黒な瞳にあたしが映った。
「聞こえないんだよね」
「何が?」
「あたしの、心の声」
あたしの言葉を真弓は笑わなかった。
代わりに、そう、と呟いて優しい目を向ける。
「悩んでるんだね」
あたしはなんだか泣きたくなって、思わず目をつむる。
そして小さく頷いた。