不完全美学
「今日大人しいな」
不意に凪が口を開く。
あたしはわずかに肩をぴくりとさせた。
「いつも、大人しいじゃん」
会話が妙にぎこちない。
ううん、ぎこちないのはあたしだけなんだけど。
そんな会話をしながらも、凪の筆は休まらない。
それを支える節のある指。
顔にかかる栗色の髪。
突然あたしの中に沸き上がる衝動。
触れたい。
いや、できない。
触れたい。
できない。
あたしの頭の中はそんな葛藤に支配された。