不完全美学
ほんの少し手を伸ばせば届くくらいの距離なのに。
それが簡単に出来ない関係。
きっと普段のあたしなら。
付き合っていようとなかろうと、躊躇いもせず触れるんだろう。
ともすればその手を握ったり、腕を絡めたりもしたはずだ。
どうしてあたしはこんなにも消極的になってしまったんだろう。
紙面に凪が咲かせた鮮やかな蓮の花を見つめる。
何があたしに何も出来なくさせるんだろう。
あたしは腕を伸ばそうと力を込めたけれど、やめた。
恐かった。
拒否されるのが恐かったんだ。