不完全美学
格好悪い。
でもダメだ。
その手に触れられることや、その眼に見つめられることを想像してしまう。
見つめられたまま、抱きしめられることを想像してしまう。
抑えきれない気持ち。
あたしはまたそれを振り払って、静かに息を吐いた。
不意に凪があたしに視線を移し、視線がぶつかる。
どくん、跳ね上がったあたしの鼓動。
「あ、あたし今日はもう帰る」
凪はわずかに意外そうな顔をしたけど、何も言わなかった。
逃げるみたいに美術室を飛び出すあたし。
早く。
心臓の音が凪にバレないうちに。