不完全美学
新入部員
例年よりも高い気温だと言うけれど、寒がりなあたしにはやっぱり辛い季節。
新しいブーツが欲しいな。
前から目をつけてたやつ、買いに行こうかな。
「葉月、私先に帰るね」
チェックのマフラーを細い首に巻き付けながら真弓が言う。
「うん、バイバイ」
あたしはまた教室で時間を潰す放課後を選んでいた。
前みたいに美術室に来るなって言われた訳じゃないのに。
行きたい。
でも行きたくない。
あたしは毎日、お気に入りのあの場所に行く。
本も少し読むようになった。