不完全美学

制服の上に羽織ったカーディガンの袖をこすりながら、窓の下を見下ろす。

ちょうど凪が美術室に向かう所だった。

美術室を見下ろしていても、凪を見られるのはたいてい換気する時や帰る時。

だから今日は運が良い。
……と思ったんだけど。

凪の後ろから女の子が駆け寄り、腕を取ったのが見えた。

背は高くなく、ピンク色のマフラーが印象的だった。


凪は相手にしていないみたいだったけど、振り払ったりもしなかった。

胃の上の方がモヤモヤする。

あたしが出来ないことを、なんでそんなに簡単にしちゃうの。
< 168 / 252 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop