不完全美学

「梓、今日は油絵やってみたいなぁ〜。教えて下さいよ、先輩」


しつこく甘えた口調があたしをイライラさせる。

凪を先輩って呼ぶってことは、下級生か。

梓……ね。


あたしはトイレからこそこそと出て、凪とその下級生が美術室に入るのを確認した。

なんであの子は毎日ここに来るんだろう。
なんで凪に油絵を教わるの。

あたしはもう一度トイレに戻って鏡の前に立つ。

入念に化粧と髪型をチェックし、グロスを引いた。

トイレから出て、あたしは美術室の方に足を向けた。
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