不完全美学

「凪!」


勢い良く扉を開けると、中に居た二人が振り向いた。

凪はキャンバスに向かって居て、梓は傍らから覗き込んでいた。

先に口を開いたのは梓の方だった。


「あれぇ? 園山先輩どうしたんですかぁ?」


あたしは思いがけず名前を呼ばれて驚いた。


「なんであたしの名前知ってるの」

「だって先輩、有名ですもん」


梓はイタズラする子供みたいに、面白そうに笑う。

その笑い方がまたあたしをイライラとさせた。


「なんであたしが有名なの」

「えっとぉ、男が常に絶えないって」
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