不完全美学

あたしはぎゅっと手の平を握りしめた。

あたしが黙り込んだのに気付いた梓が慌てたように続ける。


「ごめんなさい! 言葉が悪いですよねー。すごいモテるって意味ですよ」


悪いだなんて少しも思ってないような顔で、梓は言った。

あたしはずっと興味なさげにしていた凪に視線を移す。


「ねぇ凪、誰この子」


凪は面倒くさそうにあたし達を一瞥した。


「最近入部した一年。名前は……忘れた」

「え〜、ヒドい先輩。瀬田梓ですよぉ」


甘え気味に抗議する瀬田梓。あたしはほんの少しホッとする。
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