不完全美学

凪はあたしと梓のやりとりを欝陶しがっているみたい。


「購買行ってくる」


そう言い残して凪は美術室を出て行ってしまった。

それは多分、勝手にやってろってことだ。

少しの沈黙があたしたちを包んだ後、梓が強い瞳であたしを見た。


「先輩まだここに居る気ですか?」


その言い方がなんだか気に入らない。
あたしはわざと余裕たっぷりな態度をとる。


「悪い? あなたが入部する前からしょっちゅう来てたのよね、あたし」

「北澤先輩の邪魔してるだけじゃないですか」


梓は面白そうにそう言った。
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