不完全美学
陰気王子。
あたしを見下すみたいに鼻で笑った嫌な奴。
もう欲しいとは思わないけれど、なんとなく悔しい。
あたしは少し迷ってから、ゆっくりと美術室の方に足を向けた。
こっそりと窓の外から中を覗く。
北澤は相変わらず黒い絵に向かって、新たな黒い絵の具を重ねていた。
黒光りしてしまうほど塗り重ねられた絵の具。
じっと見ていると、なんだか気分が参ってきそうだ。
すっと視線をずらす。
ひたすらに黒を塗り重ねる北澤の表情は、なんて言うか、つまらなそうだった。