不完全美学

理由なんかなくたって、梓が居たって、気にすることなんかないのかもしれない。

凪は受け入れてくれるから。
それだけであたしにとっては十分な理由になる。

だけど思い描いてみるとぞっとした。

あたしと凪と梓の居る空間。
梓に指導する凪。
その光景を黙って眺めるしかないあたし。

堪えられない。

あんなに落ち着けたはずの美術室が、梓という色が混ざって変化した。

あたしの大事な場所が奪われたような気がして怖くなる。

あたしはそれに抗う術を知らなくて、ただ逃げるんだ。
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