不完全美学
「葉月、何かあった?」
元気のないあたしを心配して、真弓が声をかけてくれた。
あたしはヘラリと力無く笑い、ポツポツと話し始める。
梓の存在。
居心地の悪い美術室。
逃げ出したあたし。
ナンパ。
許した身体。
真弓は時折頷いたり、顔をしかめたりしながら聞いていた。
「あたしもう、凪のことはいいや」
あたしと真弓の間に落ちる投げやりな言葉。
真弓があたしを睨む。
「葉月のバカ!」
突然怒鳴られて、あたしはビックリしてしまった。
真弓の表情は苛立ちを含んでいた。