不完全美学
真弓は眉を寄せてため息をついた。
「何いじけてんの? 北澤君がその子に盗られてもいいの?」
あたしはそう言われて想像してみた。
凪が梓と付き合うことを。
あたしだって向けられたことのない笑顔を、梓に向ける様子を。
「いやだよ……」
胸がキリキリと痛む。
想像しただけでもあたしの心は拒絶した。
「嫌だ、嫌。だけど分からない。どうしたらいいの?」
「葉月……」
あたしはそのまま頭を抱える。
真弓は肩を支えてくれた。
あたしの頭の中はグルグルと渦を巻いていた。