不完全美学
あたしが落ち着いたのを確かめると、真弓は努めてゆったりとした口調であたしに声をかける。
「葉月、怖くても逃げちゃダメ。諦めないで」
真弓の声は優しくて、でもあたしは素直に頷けなかった。
「どうすればいい?頑張り方が分からない……」
あたしの吐いた弱々しい声が、自分でも情けない。
真弓はあたしの肩を抱いた腕に力を込めた。
「男を次々にオトしてた葉月の台詞とは思えないな。それだけ本気なんだね」
そうなのかな。
こんなこと初めてだから、あたしにはよく分からないけど。