不完全美学
「とにかく、北澤君には会わなきゃ。美術室行きなよ」
そう言われてあたしの肩にピクンと力が入る。
言いようのない不安が込み上げて負けそうになる。
そんなあたしの様子を察知した真弓が、また優しく聞く。
「怖い?」
「うん」
あたしは素直に頷いた。
すると真弓はあたしを安心させるみたいに微笑む。
「大丈夫、葉月は大丈夫だよ」
真弓の言葉に不思議と心のざわつきが晴れて行った。
この感覚は知っている。
そうだ。
凪に言われた。
凪があたしに「大丈夫」をくれたんだ。