不完全美学
男は簡単にオトせるって調子に乗っていたあたし。
凪には通用しないって、分かってたはずだった。
それを凪は嫌うって、知っていたはずだった。
あぁ、最低だ。
凪はつまらなそうにキャンバスに向かい、筆を這わせている。
「……凪」
「帰れば?」
冷たい言葉。
なんだかんだで今まで受け入れてくれていた凪が、突き放した。
梓は楽しげに凪のそばに寄り、隣に並んで絵を描きはじめる。
いやだ。
帰りたくない。
凪と梓を二人きりにしたくない。
あたしの場所、盗らないで。