不完全美学

心の中ではそう叫んでも、口には出せるはずもなくて。

あたしは手の平をぎゅっと握りしめて、精一杯声を絞り出した。


「……ごめん」


梓だって居るのに、謝るなんてダサい。

だけどその言葉しか思い付かなかったから。


少し驚いたみたいにあたしを見る凪。
その隣で面白そうに顔を覗かせる梓。

居心地が悪くなり、あたしは鞄をつかんで美術室を出た。


頬に突き刺さる冷たい風を避けるように、あたしはマフラーに顔を埋める。

分かっていたことだけれど、凪は追ってはこなかった。
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