不完全美学
北澤はじっとキャンバスを見つめ、それから小さく首を横に振る。
「これは、闇」
一緒じゃん、ってあたしは思ったけど、なんだかそうは言えない空気だった。
北澤凪はやっぱり陰気。
またため息が出そうになり、あたしはキャンバスを眺めた。
右下の文字が目に入る。
「ナギって、良い名前だね」
あたしがそう言うと、北澤も視線を右下にやった。
北澤はまた何も答えない。
あたしは少しムッとしたけど、キレても仕方ないのでさらに聞く。
「あたし、凪って呼ぶことにする。いいでしょ?」
「勝手にすれば?」