不完全美学
「俺はもう帰るけど、お前はまだ居る気?」
「あ、あたしも帰る」
あたしの歩幅なんて少しも気にしない凪の隣を歩く。
凪はあたしを突き放さない。
梓のことだって、欝陶しそうにしながらもちゃんと面倒見てる。
優しいわけじゃないけど、冷たい奴じゃない。
最初はなんて陰気でムカつく奴なんだろうって思った。
だけど今はそうじゃない。
凪が変わったのか、あたしが変わったのか。
まぁ、どうだって良いや。そんなこと。
ただ肩を並べて歩けることが、あたしは嬉しい。