不完全美学
歪
移動教室のために真弓と廊下を歩いている時だった。
前方から梓がやって来た。
無視して通り過ぎようとした時、梓はあたしを呼びとめた。
「待って下さいよ、先輩」
「何? ここは3年の階でしょ」
梓はわざとらしくニッコリと笑いかける。
「私、北澤先輩に告白します」
瞬間、あたしの心臓が大きく跳ねた。だけど努めて平然を装う。
「そんな事わざわざ言いに来たの?」
「先輩が何も知らないまま失恋したら可哀相なんで」
どこから湧いてくるのか、余程自信があるようだ。
あたしはイライラしながら一つため息をついた。