不完全美学

心配する真弓にあたしは平気だと言って笑いかえした。

だけど正直複雑な気持ちだ。
凪が梓にオチるなんて思えないけど、可能性がないとも言い切れない。


それからの授業はあまり頭に入らなかった。
まぁ、それはいつものことなんだけど。

放課後、あたしは少し躊躇ったけれど、真弓に押されて美術室に向かう。

大丈夫、大丈夫って、胸の中で何度も唱えながら。


人通りの少ない廊下を抜けて、突き当たりの美術室の扉に手をかける。

開こうとしてすぐにやめた。
中から梓の声がしたから。
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