不完全美学
「私、先輩が好き。大好きです。付き合ってください」
「瀬田……」
凪の声もはっきりと聞こえた。
凪の返事は?
嫌だ、聞きたくない。
あたしは一歩後ずさりし、そのまま走って家に帰った。
あたしの心はザワザワとうるさく、耳をふさいでしまいたいくらい。
あの場は逃げてしまったけれど、二人のことが気になって仕方がない。
凪がもしOKしちゃってたら、今度こそ一緒に居られない。
いっそあたしの気持ちを告げたら?
ダメ。
自信もないし勇気もない。
あたしはその晩眠れなかった。