不完全美学
あたしはゆっくりと凪のそばに寄る。
「凪の絵、見たよ」
「そうか」
「入賞おめでとう……」
凪はあたしを真っ直ぐに見てる。
あたしはなんだか泣きそうで、震える手を握りしめる。
「あれ……あたしだよね?」
そう。
あの絵に描かれていた泣いてる女性はあたしだった。
個性的な凪の作風だから、普通なら人かどうかの判断も難しいんだけど。
でもあたしには分かった。
あれはあたしだった。
泣きそうなあたしと、視線を逸らさない凪。
すると、柔らかに。
凪が微笑んだ。