不完全美学

心臓が止まるかと思った。
きゅっと鳴き声を上げて、切なく絞まる。

凪が笑うなんて初めてで。

驚きと戸惑いと、なんだか分からない嬉しさにあたしの脳内は支配された。


知らなかった。
凪がこんなに優しく笑えるってこと。


呆然とするあたしに向かって凪は言う。


「そう、あれはお前だ。俺が描きたくなったものは、お前だった」


あたしは胸の奥の方から、沢山の感情が沸き上がってくるのを感じた。

込み上げる感情に耐え切れなくて、あたしはその場に泣き崩れた。

あの絵の涙みたいに、この涙は輝いてるのかな。
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