不完全美学

周囲がざわつく。
朝っぱらから余所のクラスで大泣きしてれば、当然か。


凪は面倒臭そうに椅子から立ち上がると、座りこむあたしの前にしゃがんだ。

ゆっくりと手を差し延べて、あたしの髪をかきあげる。

あたしは速まる鼓動がバレないように息をとめる。

あたしのぐしゃぐしゃになった顔を見た凪は、またふっと笑った。

ほんとに、あんたの笑顔は心臓に悪いってば。


凪はあたしの腕をつかんで立ち上がり、そのまま腕を引いて教室を出る。


「ひとのクラスでピーピー泣くな」


あたしは腕を引かれるまま、凪に着いて行った。
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