不完全美学
綺麗だ
凪に連れられて来たのは美術室の裏。
美術室には鍵がかかっているから入ることは出来ないんだ。
あたし達はそこの段差に腰掛ける。
「顔、拭けば?」
「ありがと……」
差し出されたハンカチは水色のシンプルなものだった。
凪がそんな気のきく奴だったなんて、意外だ。
「あの絵のあたし、なんで泣いてるの?」
凪はあぁ、と呟くとどこか遠くを見るようにして口を開く。
「あの時のお前だ。母親のことで泣いた時」
ママの彼氏のことで家から飛び出した時だ。
あの時あたしは凪の前でみっともなく泣いた。