不完全美学
「あたしは……」
不意に口を開くと、凪は不思議そうにこちらを見る。
「あたしは、完璧なものほど綺麗だと思ってた。あたし自身にも完璧さを求めてたもん」
あたしはなんだって上手くやれているって、そう思っていた。
そうでなきゃいけないって思ってたんだ。
傷や影は、見ないふりをして。
凪は手を後ろについて空を仰ぎ見る。
突き抜けるような青と、渇いた雲が見えた。
「俺だって思ってた」
授業中の校舎はとても静かで、あたし達は別の空間に居るみたいだった。
凪だけがあたしと空間を共有していた。