不完全美学

「あたしは……」


不意に口を開くと、凪は不思議そうにこちらを見る。


「あたしは、完璧なものほど綺麗だと思ってた。あたし自身にも完璧さを求めてたもん」


あたしはなんだって上手くやれているって、そう思っていた。

そうでなきゃいけないって思ってたんだ。

傷や影は、見ないふりをして。


凪は手を後ろについて空を仰ぎ見る。

突き抜けるような青と、渇いた雲が見えた。


「俺だって思ってた」


授業中の校舎はとても静かで、あたし達は別の空間に居るみたいだった。

凪だけがあたしと空間を共有していた。
< 216 / 252 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop