不完全美学

少しの沈黙の後、凪はぽつりとあたしに言った。


「お前、なんか変わったよな」

「え、そうかな?」


あたしが変わった所と言えば、凪を好きになったってことくらいだ。

凪以外の男は要らなくなった。

だけどそんなこと、凪に分かるわけないのに。


「あたし前は凪が嫌いだったんだ」


突然の告白に凪は少し驚いたような顔であたしを見る。

だけどすぐに表情は戻り、少しだけ楽しそうに言う。


「俺もだ。お前が嫌いだった」


そう言われても心は痛まなかった。

だって少なくとも今は嫌いじゃないってことだから。
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