不完全美学
堪らないな。
こんな、息をするのも苦しいくらいに胸が詰まることなんてあるんだ。
凪の栗色の髪が風になびく。
それを節のある細い指が整える。
触れたい。
今までこんなに他人を求めたことなんてない。
ただのステータスとしてじゃなく、凪が欲しい。
「あたしも今は凪のこと、嫌いじゃないよ」
凪の温度や肌の感触が欲しい。
凪との時間が欲しい。
凪と居られる権利が欲しい。
「あたし、あたしは……」
変なんだよ、あたし。
今すごく泣きそうだ。
「あたし、凪が好き……」
心の底から、あたしはあんたを求めてる。