不完全美学
言ってしまった。
梓のことだってまだ分かってないのに。
もしかしたら、凪はもう梓に返事をしてしまってるかもしれないのに。
それに言うならもっとちゃんと言いたかった。
ちゃんとしたシチュエーションと、ちゃんとした台詞で。
馬鹿みたい。
全然上手くいかない。
凪はまた空を見やると、静かに息を吐いた。
何も言わない凪。
沈黙があたし達を包み、言いようのない緊張があたしを襲う。
凪は梓になんて答えたんだろう。
そしてあたしには、なんて答えるんだろう。