不完全美学

言ってしまった。

梓のことだってまだ分かってないのに。

もしかしたら、凪はもう梓に返事をしてしまってるかもしれないのに。

それに言うならもっとちゃんと言いたかった。

ちゃんとしたシチュエーションと、ちゃんとした台詞で。

馬鹿みたい。
全然上手くいかない。


凪はまた空を見やると、静かに息を吐いた。

何も言わない凪。

沈黙があたし達を包み、言いようのない緊張があたしを襲う。


凪は梓になんて答えたんだろう。

そしてあたしには、なんて答えるんだろう。
< 221 / 252 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop