不完全美学
一つ呼吸をおいて美術室の扉を開く。
するともうすっかり慣れた油絵の具の匂いがした。
ぱっと目に入る見慣れない人影。
初老の男性、おそらくは教師だけど、あたしは関わったことがない人だ。
一緒に居る凪と何か深刻そうに話している。
あたしは邪魔をしないように静かに入り、扉を閉める。
ほぼ同時に初老の男性は凪の肩をぽんと叩き、あたしの居る入口の方に向かってきた。
あたしは一応軽い会釈をし、初老の男性はそれに応えてから美術室を出て行った。