不完全美学

一つ呼吸をおいて美術室の扉を開く。

するともうすっかり慣れた油絵の具の匂いがした。


ぱっと目に入る見慣れない人影。

初老の男性、おそらくは教師だけど、あたしは関わったことがない人だ。

一緒に居る凪と何か深刻そうに話している。


あたしは邪魔をしないように静かに入り、扉を閉める。

ほぼ同時に初老の男性は凪の肩をぽんと叩き、あたしの居る入口の方に向かってきた。

あたしは一応軽い会釈をし、初老の男性はそれに応えてから美術室を出て行った。
< 226 / 252 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop